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[185020] さよならの手
詩人:どるとる [投票][編集]


夕闇の中に目を凝らしてごらん
何かが見えてくるから
闇に目が慣れたら そこに見えるのは
思い出の向こう側に 揺れてるブランコ

砂場に誰かが つくった砂山と置き去りにされた小さなシャベルとバケツ
目を開いたら もうそこには何もないよ

僕はそんなふうにいくつもの
思い出のそばを通り過ぎてく
もう取り戻せない
もう言葉も交わせない
大切な何かと さよならしながら
生きていくんだと わかったんだよ

あかね色が 空を染め上げたら
帰っておいでって
優しい顔で笑ったあの人を思い出す
でもいつもなぜか帰りたくなかったんだ

楽しすぎて いくら時間があっても遊び足らなくて駄々をこねた
そんな気持ちにももう戻れないことも知っている

僕は そんなふうにたくさんの
場面を積み重ねてきたけど
うまく思い出せない
夕暮れ時、赤く染まるこの手はきっとさよならする為の手だって 想ったんだよ

でもね 本当はそれだけじゃなくって
少しずつ少しずつ 遠くなる思い出が
悲しくないように 忘れられるように
振られるべき手だってことにも気づいた

僕はそんなふうにいくつもの
思い出のそばを通り過ぎてく
もう取り戻せない
もの言葉も交わせない
大切な何かと さよならしながら
生きていくんだと わかったんだよ

だから 今日も夕日の色に赤く染まる
この手で さよならするんだよ
そしてその時流れた涙は 明日の笑顔に変えてゆくんだよ。

2014/05/18

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