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[24169] こんにちは図鑑U
詩人:望月 ゆき [投票][編集]

小さな頃
引っ込み思案なぼくに、と
ママが与えてくれた図鑑は
表紙をひらくたんびに
こんにちは
こんにちは

語りかけたので
ぼくはひとりぼっちではなかった

ぼくの図鑑は
それからも毎日
こんにちは
こんにちは

ひっきりなしに語りかけるので
いつの頃からかぼくは
誰かが
ぼくの心とか
そういう部分を
コンコンとノックするたんびに
こんにちは
こんにちは

たたみかけるように
声を発しながら
ずんずんと近づいては
深く深く
入りこんでゆくすべを
身につけていた


たいていはそのうちに
さようなら
さようなら

深い深いところで
耳をすますぼくに
その人の声が
とどいて
それっきりとぎれたりするのだけど
そんなときぼくは
さようなら
さようなら
とか、
いかないで
いかないで
とか、
って
語るすべを
もうずっと持っていないので
ときどきぼくは
ひとりぼっちになって
まだぼくは
図鑑を手放せないでいる

2004/12/29

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