詩人:凜一 | [投票][編集] |
不規則な揺れに身をまかせ
窓の外を見つめる振りをしながら
考えていたこと
僕は何処にゆくのだろう
ポケットには古びた整理券
何処で乗ったかも覚えていない
昨日まで生きてきた日々すら曖昧で
ただ空虚な喪失感だけを抱いていたから
僕は何かを失ったのだろうと思った
ずっと欲しがっていた何かを
やっと手に入れた何かを
透明で
綺麗で
できるならずっと触れていたくて
どうにかして守りたかった何かを
そう
僕はたしかに失ったのだ
心にスキマが出来るとはこういうことか
けれども
スキマどころか僕の心にはもう何も入っていない気がした
もう触れることも守ることもできない
これは回送ではないから
もう戻ることなんてできないんだ
なぜか頬が濡れた
とめどなく溢れて
どうしようもなかった
軋んだ音をたてて
揺れがとまった
終点「サヨナラ」
ここで僕は下りる
ポケットの整理券は
すべての始まり
涙に濡れて
大切にしすぎて
汚れすぎた「好きだよ」