詩人:リコ | [投票][編集] |
雨に濡れた新宿駅
改札前
コーヒーショップ
斜め右
凛と佇む僧は殿方
巡礼御一人
泥足は泣いてる様に
チリンと鳴らせば
赤い傘の女の子
ママあの人
なにやってんの
幼い声に
まっすぐ刺され
あみがさから
垂れた雨水
耳の奥まで辿り着き
ごわごわ
目に映る世界遠のけた
一つまた一つ
赤や青や透明や黄色のコウモリが
行ったり来たり
行ったり来たり
どうでもいいと
ふと見下げれば
踏み締められた
吸い殻とキップ
極楽浄土旅立った
妻と重ねて
全身の血が
のけ反った
俺は何をやってんだ
俺は何をやってんだ
俺は何をやってんだ
死角を選んだはずであった
ほら見ろ皆
石ころにしか見えない
俺の修行は成功だ
俺の修行は成功だ
俺の…
突如
目の前を横切る
紙コップ
そこから
香しいコーヒー豆の
ふわんとした匂い
消化したはずの
喪服色した絶望
(クソッ)
浄化しきれぬ
確かな確かな
日々刻まれた
視覚と嗅覚は
妻の入れた
あの黒褐色の液体
習慣の匂い
新聞紙越しのお前が
何やってんの
早くしないと
電車行っちゃうわよ
困り顔で
毎日言うんだ
リピート
何やってんの
何やってんの
何やってんの
何やってんの
何やってんの…
ねぇママあの人なにやってんの
はやく
しないと
でんしゃ
のりおく
れ
チリンチリンチリン!!!
乱暴に振り鳴らし
鼻についた
雨混じりの
コーヒーの匂い
かき消そうと
ザァァァァァァ…
チリンチリン
ザァァァァァァ…
チリンチリン
(お前に会いたい)
人混み忙しく
騒つくホーム
(お前に会いたい)
煩く小さく
漏らした声
天を仰いで
嗚咽をあげた