詩人:はちざえもん | [投票][編集] |
最近、意識し始めたんだ。時間は流れてゆくモノじゃなく、日々消えゆくモノなんだって。なぁ、笑ってくれよ。今、初めて、君の恐怖がわかった気がするんだ。
毎年、当然の様に春が来て、そして当たり前のように4月7日がやってくる。あれほど鮮明だった君の横顔も、日々色あせてゆく。なぁ、不思議だよな。決して忘れないと誓ったことも、もう過去のことでしかなくなっている。
怖いんだ。俺を証明するものがなくなってしまうことが。俺がなくなってしまっても、世界は何の疑問も無く回り続けるだろ。
怖かったんだろ。知らぬ間に、自分が思い出になってしまうことが。やっとわかった気がするんだ。君が何に恐れを抱き、何を考えていたのか。
たぶん俺がなくなってしまったその後は、君と同じ場所に行けるとは思えない。きっと皆、それぞれの場所で、それぞれの暗闇の中にたたずんでいるだけなのだろう。なんとなく、そう思う。きっと皆、それぞれの‘無‘のなかで、それぞれの思い出だけを抱いて‘在る‘のだろう。そう、思う。 でも、‘神様‘とか‘天国‘とか、‘あればいいな‘とも、最近思う。強烈に、そう思う。
今年の桜は少しだけ、色がくすんで見えるけど、鮮やかすぎる花びらは、きっと心が痛むから、これが一番だ、とも思うんだ。君はもうこの場所にはいないから、穏やかなそよ風の音も、そのにおいも、暖かな陽射しも、少しくすんだ桜の花びらも、感じることは出来ないんだね。
でも、どうしてだろう。君の存在を胸の奥に自覚したとき、本当に君の温かさがにじんでくるんだ。君はいつも温かく笑いかけてくれるんだ。
胸の中で生きている、なんて、ただの独りよがりかもしれないけど、今はそれだけが俺を証明してくれる理由なんだ。