詩人:獏 | [投票][編集] |
発光する街並から
少し離れて
星空の下黒く沈む海
漁港のコンクリートが
冷たく海を拒んで
貨物列車の汽笛が
夜の波音と共鳴して
湿った静寂に響いてる
ぬらぬらと
揺らめく海面が
当てなく立ち尽くす
足元をすくい
闇に飲み込もうと
誘い続けてる
眺めているだけでよかったんです
岸に沿って慎ましく灯る
人の住まう証に縋りつきながら
夜の闇に溶けるという誘惑と
何も望まない虚脱と
海の鼓動の繰り返す潮騒と
心臓の押し出す脈の
調和を見つけだすまで
眺めていただけなんです
夜明け前にここから
何も持たず立ち去るつもりで
海蛍を探しにきたんです
見つけられたら
その仄かなあかりを
眺めているだけでよかったんです