ホーム > 詩人の部屋 > 過去ログ > No.53000-53999 > No.53158「一人の夜に」

過去ログ  〜 過去ログ No.53158 の表示 〜


[53158] 一人の夜に
詩人: [投票][編集]


発光する街並から
少し離れて
星空の下黒く沈む海
漁港のコンクリートが
冷たく海を拒んで
貨物列車の汽笛が
夜の波音と共鳴して
湿った静寂に響いてる
ぬらぬらと
揺らめく海面が
当てなく立ち尽くす
足元をすくい
闇に飲み込もうと
誘い続けてる
眺めているだけでよかったんです

岸に沿って慎ましく灯る
人の住まう証に縋りつきながら
夜の闇に溶けるという誘惑と
何も望まない虚脱と
海の鼓動の繰り返す潮騒と
心臓の押し出す脈の
調和を見つけだすまで
眺めていただけなんです

夜明け前にここから
何も持たず立ち去るつもりで
海蛍を探しにきたんです
見つけられたら
その仄かなあかりを
眺めているだけでよかったんです

2005/10/23

前頁] [投票する] [次頁

- 詩人の部屋 -