詩人:望月 ゆき | [投票][編集] |
満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと
水面が降りてくる
そうやって
1ミリずつ
世界は、ずれてゆく
正しい速度で
目盛りが見えはじめると
魚が跳ねて、
そこここに散ってゆく
ブラインドの内側で
尾ひれを
あるいは胸びれを
重ねて眠る
いとしい、遠い他人と
おはよう、を言うために
世界が続くのだとしたら
ブラインドの隙間から流れ入る
その角度で
浅い夢へと切り込むもの
それを、だれかが
朝と呼ぶ