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[61047] 湯浴み
詩人:緋文字 [投票][編集]

何通りかの鎮め方は得た
沈みきることなく
浴槽は浅い
ひとりに休まり
うってつけだと
この場所を選ぶ

込み上げた熱は声にせず
上回る温度へと奪わせ流す

栓を抜き 何もない
吸い込まれる
幾筋かの黒を見届ける
いつもの呼吸で後にする

それでも 気を抜けば
決まった時刻に繰る

躰が冷えきるまで
眠らないのは
逸らさぬ事で
見えると信じた延長



楽にして、

安まる声に誘われて

冷えた足先浸けるのを
躊躇わないほどの
温い湯

こわばる躰
頭と背を胸にあずけ

ただ手の平で かけられる
湯の鳴らす
音を聞く

時折り触れる手は
欲を含まない
母のようで心地よい

何も交わさず

両手で掬ってみた

重みもあって温かく
透明でいて透明でない

自然と緩まり 解いた身

それを見守る 眼の中で

湯が返す
音だけを聴き
赤子の様な気分になれる


私の掬う 私の色の
内に包んだ 熱の行方で

せめて届くもの 温められたなら

2005/12/27

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