詩人:弘哉 | [投票][編集] |
痒みを抑えるために
腕に垂らした熱湯
水道が音を立てる
止まった頃には
白い皮がパラパラと浮いていたけれど
耐えられないほどの痒みはなくなっていた
元々 耐えられない痒みでもなかったけれど
赤ペンのインクが突然切れて
仕方なく途中から青くなった答案用紙
不恰好な外見ほどは不自由もしていない
絵の具で汚れきったタオルを捨てて
「粗品」って書かれたビニールを破る
まっさらを汚すのには少し気が引けたけれど
一旦使ってしまえばすべて同じだろう
本命だったり
代用品であったり
そうして必要としてきて
元々代用品だったものが
本命へと代わっていく瞬間
変わっていく瞬間
ちびていた消しゴムが
とうとう消しカスへと変わった
引き出しの奥の白い固体は
次の日 筆箱の中身になる
使いこんでいた運動靴は
雨の日以来靴箱の中
今日足元で俺と歩みを進めているのは
代用品だった本命
君を忘れるために
布団へと現実逃避して
俺を癒す物質を
君からα波へ代えようとしたっていうのに
レム睡眠で投影されたのは
他でもない君の顔
代用品は
どうやら本命にはなりえないようだった