詩人:ライカ | [投票][編集] |
昼過ぎ
しっとり
水気のある
部屋に散らばった紙の感触
窓の外は
濃い緑さえもぼかす
真雨の国
タチアオイは
潤った その花弁を
桃色の羽根を広げた花弁を
そぼ濡らし
桃のしずくを滴らせ
哀 を語る
白く
霧雨に分け隔たれた山々は
別の国や
別の世界へと
誘おうとさえ見える
私は
その世界こそを
願ってやまない
私は
神隠しのような潔さを求め
その白に身を委ねることを
夢みるのだけれど
屋根を不規則に叩く
粒の音が心地よく
夢路の旅人であることだけで
満足しよう と
うつし世の
意識を手放そうとする
目が覚めたらば
おそらく
視界は晴れて
私は
またも乗車券を
取り損ねてしまったことを
がっかりせねばならない
しかし 仕様がないのだ
もうすぐ
ここは
夏に 身を焦がす
抜けた色の天を
健気にも見つめ続ける
黄金色の花にも
私は
未練があるのだ