ホーム > 詩人の部屋 > 過去ログ > No.86000-86999 > No.86350「想刻 故。」

過去ログ  〜 過去ログ No.86350 の表示 〜


[86350] 想刻 故。
詩人:松尾 優月 [投票][編集]


想刻の音律は気づけない、新月を連れるだろう。
終末の情景を、連れるだろう。

秋雨の葡萄棚を走り抜け、られなかった先刻。酒をつまみに朽ち果てた心に、法律無視で走らせた輪を停めた。先をみつけられる、かな。

秋雨のひと粒種が渇いた唇に堕ちた。

(くるしかったね、まだくるしいね)

匂いがします。
人の焼ける匂いです。
秋雨は消し去ってはくれません。
誰かしらの、温もりに…
咳き込み、縁遠い。と煙草に、最近傷めている肋骨裏を気にせず灯し、煙突。と涙を季節に委ねた。

(くるしかったね、まだくるしいね)

葬刻。葡萄棚にぶらさがっていた。言葉、一文字から、故。
人は、繋がりあい、存在する。一粒。心あるものが、自身の斎を見て、いた。

葬列。三位一体の棺。
目を醒ましなさい。
あなたを大切にしてる人が
あなたの傍に、過去に触れようとした。

弱いのは全部、誰。という気持ち。
涙は、秋雨の葡萄棚にぶらさがっている。おちることはないのだから。

何から含めばいいのかな
すべて呑みこんだらいい

記憶媒体負荷に
より凍結状態へ
解凍する回答は
飲酒による処理
能力低下電算処
理の結果予備電
源に切り替えた
のだが漏電を回
避できぬまま中
央処理装置破損

秋雨が生身を、慟哭に変えた。言葉にはならずに。
抱きしめることをしたいのだけど…。
辿る実質的距離は
刻々と煙りに巻かれ、噎せるすべてを無理やり鯨飲したのち。

最後に

のつく呼び名で、ではなくて
最初に

のつく呼び名で、なければならないの

背中に羽根を。そうだ。行かなければ。君の生命ごと包める。持ち合わせた言葉がある。

五十音律の二粒、だけでいい。
回答からの解答を。たくさんの葡萄棚から、ふたつ。

あなたに、あ(a)を。
あたしは、い(i)を。

(くるしかったね、まだくるしいね)

それでいい。それがいい。
呑みこんだ先の答えなの。


2006/09/25

前頁] [投票する] [次頁

- 詩人の部屋 -