| 詩人:はちざえもん | [投票][編集] |
乱れた呼吸を三秒 暗いトンネルを進む、その奥。
シェルター越しに見た春は、ただ荒涼とす。
何を残せるか苦心して、何も残せぬことに絶望して
あなた達の未来を奪ったと、涙を流す祖母。
いつか文献で見た春は色鮮やかに。
彩られた鮮やかな春は僕らの部屋の壁画。
僕は壁画の春しか知らない。
祖母の涙とその色彩は、どこか実感を伴わない。
禁止区画を乗り越える。いつか文献で見た春を触りたくて。
春は匂いを持つという。太陽の持つ匂い。
シェルター越しに見た春は、いつか文献で見た春とは違う。
焼け焦げた臭いが鼻につく。光の差すことない沈黙の春。
核の冬に、春は沈黙す。