１
（記号が離れていく）
（この消失の先にある果ては海ではないと少女は言う。あれはリベラだ）
近く、震える目蓋が幻影の旅団を打ち倒し俺はベネズエラへと旅に出る。「春になるまでには約束をはたそう。」降り終えた雪がホセの肩から音もたてずに落ちた。白髪が輝いた瞬間を目撃したのは俺のダブルクロスカウンタ―。（力石が、祭壇から、消えた。）俺は嘔吐する。繰り返す涙橋からの通信を無視し、俺はなによりも大きな観音を殴り飛ばした。慌てる住職にハンケチを手渡してドランクという言葉を海へと流す。反動が涙となるのだ、俺は愛を殺した。愛よりも拳に生きてきた。冷たい雨のなかで少女が駆け抜ける、明日は眩しい、眩しい光のなかに、一切を忘れ俺はベネズエラへと旅出つ。俺はベネズエラへの飛行機で緑色の肌した男の隣に座った。男はピッコロと名乗った。何人だろうか、顔色があまり良くないようだが、しかしそれは俺にはどうでも良かった。俺には終わりが見えている、張り裂けそうな意識を堪え俺は窓から永遠を見る。開かない窓を見つめながら俺は大将のことを考えて、頭を痛めた。
（あれは俺のベネズエラ人だろう。）俺は青く染まった着物を用意し、鋭い眼光でベネズエラ人を睨みつけた。彼らから俺が学んだことと言えばルンペン崇拝とギタ―の初歩。ある種のベネズエラ人は涙橋を渡ることを拒否する。俺は大量のドランクを食い倒した。リベラが焼け焦げると息が吹き飛ぶ、枯渇するベネズエラ人たちはまさに地獄絵図だ。俺は神に祈る、それは救済を、夢の救済は地獄のなかでは何の意味も持たない。それは数百万の青狸の群れよりも尊く、「甘美なる」ホセの数々。そうだ、俺はピッコロにより騙されていたのだ。俺は黄色、あいつは緑色。不健康、不細工、雑魚ではないか、おまえは。頭は冴えない。光もしない。ホセよ、おまえは白い。リベラ、おまえは黒い。だからどうした。それこそ奇妙奇天烈だ！
（ベネズエラの息子が酒を運んでくる。）死の海と地獄の青狸にかこまれた君の純粋な瞳がホセを焼いたのだろう。酒に溺れたホセの汚れた瞳はゆっくりと落ちていくグラスすら追わない。リベラがグラスを取り、空のグラスを天へと捧げる。ホセの白髪は風に流されて地獄へと繋がる。死の光に蝕まれた足音はすぐそこまできているのだ。夜までには逃げなさい。リベラが息子に呟いたとき、俺はただ、泣いてしまった…