詩人:黒木ミニー | [投票][編集] |
妻が教会に通いはじめた。賛美歌のあと、晴れた空に「神よ!」と叫ぶ。それを見た俺が笑うとボンバイエは腕を振り上げ俺の頭を殴った(俺は永遠を探し、果てのない道を歩く。)パンツはお正月お正月と繰り返し、栗頭はお年玉お年玉と繰り返す。教会の帰り道に餅を購入するボンバイエ。イエス、キリスト。鳩は飛び上がり、死は侵される。俺の乾いた血を川に流し、地獄から逃れようとするのは無駄な行為だと知りながらも俺は静かに流れ、風は乱暴に吹きつけてくる。沈んでいく陽、教会からは遠く離れ、年賀状を書かなくちゃとボンバイエが呟いた。ああ、バルセロナ
落ちてくる死が雪のように見えてきて、窓辺からは犬が顔を出す、永遠の読み方も知らないで、沈む陽に導かれた精霊は稲妻を召喚した。ああ、神よ何故ですか、夕陽に照らされる稲妻の頭。真冬の嵐か、それは地獄への炎、約束されていた奇遇。地獄への道はまだ遠い。夜が降りてくる、冬の闇は疲れたまま俺たちを包む、「義兄さん、また夜遊びかい」栗の野郎が俺の肩をつつく、パンツは俺の顔を見もしない、稲妻はにこにこと俺の手を握る。「忘年会をしたいと言っていただろう、鱒夫君」生の椅子への離れ星、嫁は黙って子供たちを連れて行く。「あんまりよ、義兄さん」パンツの声が遠くで聞こえる。忘年会、俺はそんなことを一言も言っていないのだが、吹く冬の風にのり永遠が遠くへと飛んでいくのを俺は視た。おお、静かに歌う、美しきマリア!磯野家はすでに正月の準備に忙しい。ああ、すべては夢まぼろしの月の光に、俺は凍りついた唇を叩き壊す。「良いですね、義父さん」婿養子。だって俺は婿養子。
稲妻と俺は小さな店に入り、絶望の果てで俺は永遠を探した。深紅の光は稲妻の頭を照らし、行き来する女たちは優しい笑みを浮かべる。見知らぬ女に抜かれれば良い。沈む陽の死を海に落として、絶え間なく嘆く亡霊たちに守られて。その最後の稲妻を抜けば光が、光が世界を支配するのではないだろうか。静かな店のなか、まだ永遠は見つからない。
輝きのなかで、稲妻は微笑んでいる。爽やかな風が稲妻を揺らす。(飛んでゆけば良いものを)俺の隣にようやく女が座る。今日は池からの侵略者ときたもんだ。鏡だ、鏡を持って来い。稲妻の光さえ薄れる、霧に包まれた蛙の声。「麗美です」名前負けした女は座ってすぐに煙草に手をやる。客は俺なのに。客は俺なのにだ!