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[93039] 鱒夫の溜息(続き)
詩人:黒木ミニー [投票][編集]


地獄の窓に雪がみえた。月があらわれてはかくれ、外では女たちが歌を歌っている。近づいてきた精霊は白い花をくわえて、消える。永遠よ、その影さえ俺に見せずに、ああ、静かな夜だ。蛙は煙草を吸うのが仕事らしい。稲妻は陽気に歌を歌いはじめた。女たちの拍手、声援。誰が知るか、そんな曲。消えてしまえればいい。雪は永遠へと続いているのだろう。いっそ飛び出そうか、この窓から―

「随分と遅かったわね」
ボンバイエが感情の無い声で呟く。見上げる空もなく、俺はただ下を見る。静かに流れる風の間に永遠の欠片を探して、探して。「鱒夫君が楽しそうで良かったよ」稲妻が満面の笑みでそう言うと皆が俺を白い目で見る。おお、神よ、私はどうすれば良いのか。泣くことすら出来ずに、ああ、俺は婿養子。逆立ちしても婿養子。「いやあ、義父さんには気をつかって頂いて」心にもないことを言いながら席に座るとパンツが「勉強…」と呟き席を立つ。ああ、窓からは月がよくみえる。雪は何処へ消えたのか、月の光が稲妻を照らし、鳥たちは皆、俺から離れて行くだろう。まだ眠りはさめない。この悲しみの夢の中で、俺は、俺は・・・

2007/01/07

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