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[184034] 氷点
詩人:千波 一也 [投票][編集]

白いひかりの内側で
やさしくもつれ合うものを
聴いていたかったのに
ただ、聴いていたかったのに

生きていてもいいですか、と問うよりも
生きていなくてはいけませんか、と問うほうが
おそろしく鋭い


かねてより
足音を待つのが好きでした
おのれの行方はさておき
気ままに彩色するのが
好きでした


白いひかりが一直線に磨耗してゆく
あれはもう、内でも外でもない
形、と呼ばれるためだけの
疲弊

わたしのからだは
あらゆる支えを軋ませながら
いつしかその頼りなさが頼りになって
やわらかに恵まれてきたけれど
悲しい結び目は必ずあらわれる


素足に広がる波紋のはじまりは
ささいな涙と
ささいなため息

ささいな全てのはじまりは
かならず此処にあるけれど
終わりについてはわからない
誰もわからない
わかってはいけない


睦まじくいつわり合いましょう
睦まじくとらわれ合いましょう
どちらがどちらを担うかなんて決めたところで叶いません
睦まじくうつむき合いましょう
睦まじくたちのき合いましょう
どちらがどちらを担うかなんて境で言ってもはじまらない


連鎖してゆく矛盾のそばには
いつでも言葉が寄り添っていて
それはそれは安らかに事も無げに
季節をつむいでみせるから
まぼろしは燃えてしまえる
美しさをたたえて燃えてしまえる
けずり落とされてもしまえる
はかなくて
放ってはおけないきらめきとなって
けずり落とされてもしまえる


従順なら良かった
もののあはれ、にも
辱めにも
咎めにも

従順なら良かった


はげしさを増す怒りの深みから
きびしさを増す慈しみの上辺から
奔放にともされ続けている
いちるの望み
常夜灯

その下で
あるいは上で
ひとつのものへと帰ろうとするうたが
わたしの耳に運ばれる

ひとつのもとから分かれたはずの
寂しいばかりではいられないはずの
わたしの耳に


2014/02/14 (Fri)

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