詩人:イデア
涙に濡れるのは
頬でしょうか
心でしょうか
名も無い夜にあなたを思います
遠く帰らぬ日々へと去ってしまったあなた
泣いたり、笑ったり、怒ったり
いつだってあなたは思い出の中に息づいていて
触れることは出来ない
名も無い夜にそっと名前を呼んで、ともすれば
会いに行きたくもなるけれど
あなたはそれをきっと望まないから
こんな夜はただあなたの笑顔を思うのです
街の明かりが星を隠してしまっても
いつかあの山で見た満天の輝きが その心を癒していたように
鈍くぬかるむ社会の泥濘に喘ぐ私を
あなたの言葉は救ってくれる
今までも、そして今でも
あなたは一献の清水でした
暑く焼けるような夏の日の
あなたは一筋の風でした
うなじをかけ、清らにしてくれる、あの風でした
清水でした
名も無い夜にあなたを思います
深く呼吸イキ-をして、あなたを思うのです