詩人:クトゥグア
俺の夢は考古学者だった
小3からずっと夢だった
いつかはアンデスの遺跡の発掘に携わるのだと思っていた
でも家は貧乏だった
電気もガスも止められるような
奨学金とバイトだけじゃ大学に行けないと分かった日から俺の人生は死んだも同然
生きる希望もなにもない
結婚して遺伝子を残すつもりもない
それでも親は俺に将来どうするの?と聞いてくる
死んでもいいんだよ別に
必死に守る価値がある人生じゃない
行く道全て糞まみれ
街を歩いて人の波を眺めれば、こいつらの人生はなんて輝いているんだろうと惨めになってくる
だから夜にしか街には近付かない
壊れちまった大切が、俺の道を塞いでいる
この手足の意味を奪うぐらいに重く大きく
どんなに立派な言葉でも
どんなに優しい言葉でも
心の物理は聞く耳を持たない
健全ではない俺の魂よ
いつかどこかへ還るだろう
遠くはない
すぐ側で死神が笑っているなら早く抱きしめてくれよ
後悔はないよ
カーテンを揺らすほどの僅かな風
俺なんて実際にはそんなものだった
煙草の灰まみれの布団さえ気にならない
飯を食ったのは何日前だ?
もうどうでもいい
静かならどこでもいい
俺は俺が嫌いな訳で
耳に手を当てた時に聞こえる心臓音さえ気に食わない
やり直す事も望まない