詩人:木下
夜のなかの夜は夢の器です
しのつく雨に細くなる電柱の灯り、
孤独に耐えてる
違う違うちがうです
それは、錨持つ事の誇り
知らなくてもよかったことや知りたかったことや知りたくなかったこと
分け隔てなく
ひもじい仔猫は憐れみを乞う一晩中
次の朝には
鳴けなくなるとは知らないから
人間になるために生まれて
なりそこねてばかり
見えない星、瞬きは緊張の暗示
信号機の点滅は始まらず終わらない歌
雨つぶて、いくら照らしても
それを数えようとはしないできないと考えもしない
夜の夜に歩く
アスファルトには宝石が敷かれる
視界の外の緑色が匂う
貪欲なわれの口は酒場までの道しか覚えない
誰でもいい誰かの犬
誰でもない誰かの犬
転がる事で囚われながらも
日向薫るタオルケットに憧れて溜息を
隠すように湿ったマッチを擦る
夜の次は夜
待っているだけなら
芥箱やコインロッカーと同じだろ
傘を持ち替える手が
まだ人間なんだと知らせるが
疾うにウンザリしながらも
未だ傘を棄てられない
残らず呑んで寡黙を護る
雨を集める架空の街は
夜の上の海になる
ゆうくれを忘れた日から
裏返ったまま
浅い夢だけが起きている