詩人:善田 真琴
瑠璃色の夜明けやらず
一人寝の寒さ身に凍みて
淋しさ誘ふ虫の音繁き秋
さへ懐かしと思ひ起さる
る時節と相成り候。
君雲に隠れ給ひしより
暁つとめての坐禅・写経
日々の習ひとなれど時に
心定むるには益無く愛刀
天次を振ひて雑念払ひ居
れば、己の未熟かたじけ
なき次第に御座候。
慌しき師走も世を捨て
俗事離れにければ、煩は
しき業も背中焼かるるが
如き責務も格別に是無く
候。
去る者は日々に疎しと
いにしへより云へど何事
につけても執着は邪なる
ものと心得候へども人の
情は頼み難く寄る辺なき
ものなりと存知置き候。
一切を忘れざらんと欲
するは悩ましく苦しき種
に自ら水遣り育てるが如
き愚行なれば人は意識せ
ざるに忘却の徒となり申
す次第なりとぞ。
雲隠れ
月は清かに
見えずとも
君忘れじの
胸に華咲く