詩人:音羽
淀んだ景色の中に
白く光る石を見つけた
その石は何ものにも傷つけられることなく
ただその存在を謳っていた
驚く程に鮮明なその光景は
記憶の中だけに刻まれて
現実なのか夢なのかさえも不確かなままだ
そうだ思い出した
その石を拾った少年を
少年は石を拾い上げると
喜びとも悲しみともつかぬ表情で手の中を見つめる
そして記憶はそこで途絶える
その先どうなったかは誰にも分からない
選ぶ事ができるのは今前を向いている者だけ
気が付くと手には光る石を握っていた
少年の目をした大人はその足をゆっくりと前に出した