詩人:noa
頼りなく宙に揺れていたのは、願いの蔦で
これはわたしの ささやかな祈り。
関節がもう随分と前から溶けてしまったかのように、脚は歩く感覚をわたしに教えてはくれなくなった。
渇いて渇いて張り付いた喉の奥から絞り出した声だって、呼ぶ名前をもうひとつも覚えてはいなかった。
とりあえず隣にいたきみの手を握ってみたところで、伝わる温度は欠片だって無かった、
あぁ そうじゃない、冷えきって滞っているのはわたしの血液だったんだ。
わたしは知っている、太陽が燃えて染める空の色を
わたしは知っている、川の水面に映る木々の揺らぎと風のかたち
わたしは知っている、ひとつ息をつくように流れていく星の軌道
だからこれは
ささやかな最期の願い
音も立てずにめりこんでゆく蔦、わたしの首は
ごとり。と落ちて全てを投げて逃げるのだろうか
最期のワルツの果てにもし、もし蔦が千切れたなら、感覚の名前をひとつずつ、また最初から覚え直してみるのもいい。
すべてはきっと、単純なことでしかないのなら
からっぽのいのちを、わたしはそっと天秤に。
指先を、爪先を、ぶらりと垂らした あとのはなし。