詩人:サエ
わたしも彼もあの人も
みんなもれなく嘘をつく
今夜あなたを諦めるのに
わたしはどれだけ車を走らせた?
どうしても噛み合わない日は
だいたい
どうしてもあなたに会いたい日
だったりする
あなたの深夜の
おやすみのメッセージは
今夜どうして
こんなに胸を締め付けるの?
わたしと過ごす他に
あなたがこんな時間まで起きてること
わたしの知らないあなたの時間
わたしの知らないあなたの顔
きっとあなたは教えてくれない
きっとわたしは知る由もない
当たり前にリンクしないふたりが
交わるのはあと何度だろう
もうなかったりするのかな
熱に浮かされたまま
放っておかないで
つかず離れずの距離は
鋭く生温いトゲだ
わたしから笑顔も涙も
奪っていかないで
消去するなら記憶ごと
あの花火の夜から始まった
苦くて甘くて半分溶けた
チョコレートみたいな
暗闇の中の頼りないろうそくみたいな
細くねじれて絡まったみたいな
今にも切れそうなふたりの糸を
吸い差しのたばこの火で
焼き切って
きれいになんて切れなくていい
焼け焦げた匂いと
くすぶった熱がとれないくらいでいい