詩人:丘 光平
うなだれた手をのがれて 川にほどかれてゆく薔薇の花束 水面に散りしかれた一度きりの庭が つめたく流れてゆく よろこび、純潔、そして愛の色づき 身体の熱が高鳴るほどに すこしずつ、 すこしずつその美しい想いは夢と流れてゆく 行き先をしらない旅びとの夜にも似て そして、降りはじめた 雨の光に灯る岸辺に 時と風に傷めたその羽ばたきを うつろに束ねる一羽の鳥 その瞳の水面に 遠く流れてゆく薔薇は 薔薇はしずかに燃えている