詩人:矢井 結緒
その子は
雨上がりの空の下
水溜りに
首を突っ込んで
冷たくなっていた
産まれた瞬間から
ママの乳房を
兄弟たちと争って
優しい気性と
引っ込み思案が
自律神経を狂わせて
毛は抜け落ち
所どころマダラに
地肌が見えていた
アタシは醜いから
ミルクを飲む資格がない
鳴きたくても
唇を噛みしめて
決して
声を上げなかった
次第に
痩せ衰えてく
小さな体に
病んでゆく自尊心を
無理やり閉じ込めて
涙で希釈する術を
いつしか覚えてた
消えたい
消したい
最初から
やり直したい
命の兆す
始めから
ママ
アタシ
ここだよ?
ここにいるのに
こころにいない
今度は可愛く
産まれてくるから
ママ
許してね
ママ
ごめんね
グッパイ、ララバイ