詩人:はるか
静かな音楽に促され
焼香の匂いの染み付いた部屋を出る
出口には生前のスナップ写真が
家族という微笑みの輪の中で
刻んできた歳月と共に飾られていた
亡き人の暮らしぶりは
話でしか知らないが
人の生き様というものは
終わった後で見えてくるのかもしれないと
悼む声を聞きながら黙偲する
佳き日、悪しき日
平坦な道ばかり歩める訳もなく
身心を砕きつつ
それでも生きる
送る者、送られる者
今少しの思いはどちらが勝るとも言えず
心残りはなかったかと
ただ安ずるばかりだ
孝行したい時に親はなし
近頃、気弱な台詞の多くなった母が
被って見えた