詩人:千波 一也
お金が無いと
パンを買えないように、
誰かを
そしらなければ
人とつながれません。
お金が無いと
ベッドで眠れないように、
誰かを
妬まなければ
人から認められません。
わたしが
誰かをいたわれば
その
行いは
高価な衣服になりますか。
わたしが
誰かを慰めたなら
その
報酬として
高層マンションに住めますか。
人のこころは通貨です。
使い途ひとつで
人生が変わる
通貨です。
それは
はるか昔からの風習で
もはや変えられません。
だから、ほら
皆が自分の富裕のために
こころを浪費させて
ゆく。
とりあえず、
とりあえず生きられたなら本望と、
こころが浪費されてゆく。
この国は
盛んに通貨が交わされて
まことに贅沢なものだ、と
わたしは
またひとつ
疲弊するのです。
通貨の一枚と
して。