詩人:どるとる
こみ上げる切なさで涙が抑えきれないよ
心の中まで照らす
夕暮れが優しいから
僕は感嘆のため息つくより先に涙を流すよ
先に進むためのドアに手をかけて でも開けられなくって
もう少し考てみたら何か見えますか?
何かこたえ出ますか?
すぐ真横を走り去る上りの各駅電車
ちょっとの遅れで乗り過ごした学生
しばらく立っていたけどうなだれてガラガラのホームにひとり
やがて冷たい椅子に腰を下ろした
まるで僕の人生
かいま見てるようで
悲しく 悲しくなったよ
夕暮れはまだ赤いまま夜に抵抗してるみたい
燃えるようなこの思いを言葉にしろと言われたとしたら
僕は言葉にできずただ笑うことしかできない
だから僕は今、悲しくてもその悲しさをごまかすことで自分自身を守ってるつもりでいるのさ
空が夜明けの次に多分いちばんきれいに見える時間
街中に優しく響き渡る
五時のチャイムが涙をそっとぬぐってくれる
世界の果てまでも染めていく勢いの橙の空が 僕にくれたものは 何の変哲もない優しいぬくもり
ああ 僕は乗り過ごした電車を忘れて
次の電車を待つよ
気長に行くよ
すっかり夜にのみこまれた街
人影も見当たらない
帰り道
ひとり ぱらついてきた小雨に傘もささずに
ずっと あの学生が電車に乗れるまで眺めていた
雨に濡れるからだと
涙に濡れる心
どこまでもつかはわからない
だけれど僕は進むよ
明日また明日へと
この心 壊れる時まで
何度だって 乗り過ごすだろう電車にさえも 手を振ってやろう
また 僕は 泣いてしまうよ
涙に 限りはないから
雨が際限なく降るように
涙にも際限なんてないのさ
ああ 僕は限りなく明日を目指して行く
悲しい一日だって
口笛 吹き鳴らして
生きている今を
大切にして
何よりも
何よりも
生きていけることを
大事にして
さあ空と僕が泣き止んだら行こう。