詩人:千波 一也
適切な一秒を
わたしにください
わずかに
ずれることもなく
適切な一秒をこの身にください
この目に
何かを映すなら
光か影のどちらかを
耳に何かを残すなら
痛みか癒しのどちらかを
この手に何かを託すなら
過去か未来の
どちらかを
胸に
何かを刻むなら
記号か文字の
どちらかを
詳細に
知ろうとするほど精確な
誤作動に傷ついてゆく
わたしです
適切な一秒を
わたしにください
何度も何度も
確かめることを
やめられないこの心に
安堵を一つ与えてください
それが
約束されるなら
わたしは追い求めましょう
幸福というものの
居所を
精密な迷路で
追い求めましょう