詩人:老女と口紅。
今
不ケーキの蝋燭に
炎は燃え上がる
/
混迷極むるこの世の渕を
杖をつきつさ迷ひ歩き
心や折れて這いずるもなを
生かされず殺されぬのなら
この身はか細き虫ケラの如
しようのないゆえ
とぼとぼ行けば
その
生きうる様に指をさし
笑ふる者さえ現はれん
時、流るるままに
身を委ねれば
目に見えて
転がり堕ちて
行くばかりかな
嫌なら流れに逆らひて
グイグイ昇る魚とならん
いつ辿り
着くやも
知れぬ路
拾らうのは
誰かが落とした
夢と希望ばかりなり
踏ん張りて踏ん張りて
この手に幸を掴む為
ちろちろ流ルル源泉を
独り占めをしてはみぬか
金をたんまり掴むまで
至福をにんまり肥やすまで
小脇に囲う蜜壷に
溢れイ出たる甘き汁
群がる蟻を払いのけ
ガハハと笑う日も来るさ
情けとは
迄う者に恵むは易し
為なる事など何一つなし
だがその道は険しくて
深々しい樹海のやう
泣き言連れづれ
己を信じて手探りで
さ迷い歩むイ薔薇の道を
ユラユラ灯る蝋燭の火と
こそりと立ち入る森の中
この身に纏うは闇の闇
恐る恐ると交わす枝々
身を沈めつつ進む先
目指す所のその奥の奥
捜し当てたる湖の
湧き上がりくる深水を
両の手に救い上げ
満月を浮かべて
飲み干したなら
息を殺して見据える主が
また一人救われたのかと
ぽつり呟く
幸福を呼ぶ鳥
その名は不苦労。
/
ホホーぅ
よく来たな‥
お前さんの右肩に
とまってやるよ