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詩人:ならか
彼は10日頑張ってみたけど
運命は彼を連れていってしまった
16歳の春
彼は意識を取り戻すことなく
幼い弟二人と兄と両親と親戚と
あたしたちを置いて
逝ってしまった
日が差し出した春の日に
彼の机をのぞいてみたけど
空っぽで
何もなかった
夕方から彼の通夜があって
式場に入ったら
彼の大きな遺影があって
妙にリアルで現実的で
涙がでてきた
彼のお母さんは泣いていて
見ていられなかった
彼の遺影の側には
あたしたちが作った千羽鶴が置いてあった
それがまわりの菊の花と妙に溶けあっていた
棺に入った彼の顔は
彼なんだけど彼じゃなくて
『生きていない』
人形みたいだったけど
彼の顔は目に焼き付けた
嘆き・無情・ナムアミダブツ・
お経の意味を考えながら
彼の思い出にふけりながら
みんな
泣いた
この前まで
普通に過ごして
普通に笑っていたのに
彼はもういない
肉体のみを残して
どこに逝ってしまったのだろう
星になったの?
天国にいったの?
土にかえったの?
生まれ変わったの?
どこにいるの?
君のことは忘れない
君がいたこと忘れない
もう少し
忘れを惜しまさせて