詩人:是清。
誰かが殺めた昨日の屍骸を棄てに来る。
大切にされるべき過去の残骸を、
粉砕しに来る人がゐる。
味気無い朝。
「腐り始めた其れを朝食にして嘲笑つて今日の糧として明日へ跳躍しやうではないか煩がつた先日のカア・ステレオ今古いレコウド走る線路に生る」
責められる事等無い
赦される事は無い
誰もが膝を抱えて僕を睨む
明日と謂ふ胎児を抱えた僕を
「浪費し過ぎたお前と謂ふ人格を何度殺してきたのだ今日と謂ふ限られた時間でお前に何が成せるのだ哀しいか、恐いか、逃げ出したいか然しお前に逃げ出せる足は無い」
深い深い穴を覗き込んだら唯ひたすらに昏い穴
そして幾千もの
蜘蛛の糸蜘蛛の糸蜘蛛の意図
出入口に掛り手招きしてゐる
すべての朝と謂ふ朝を棄てに来る穴
棄てに来るひと
すべての夜と謂ふ夜に開く穴
すべての過去と謂ふ過去を棄てる穴
すべての明日を放棄する墓場
手招きしてゐる、
蜘蛛の糸蜘蛛の糸蜘蛛の意図。