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[170197] 午睡

詩人:千波 一也


わたしが覚えた涙のあまみは

傍らの辞書によれば

もろみ、と呼ぶそうで

カーテン越しの陽射しの匂いは

ときどき広くて

ときどき鋭い



いつか見た夢の数々が

今でもずっと夢なのは

否めようにも否めない

まるで優しい足枷みたい




息継ぎを忘れたら

魚になれるものであろうか

いつでもどこでも空をも往ける

きれいな魚になれるだろうか


ひっそり小出しにする嘘ならば

手のひらに負える重さが良い




まぶたを閉じても瞳はまるい

見えないからこそ尚更まるい


そこに名付けられた呼び方を

わたしは知りえないけれど

約束、という響きかたが

わたしの胸には温かい



両目でゆらりと宙を泳いだら

もうすぐ蝶々が舞ってくる

ひとつふたつと

多彩に結ばれて



2011/08/02 (Tue)
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