詩人:千波 一也
ありの行列は
時間の砂をせっせと運んでゆくような
そんな気がして、わたし
のどが渇きました
真っ白、とは言い難いミルクを
すっと飲み干せば
胸の時計は
狂いはじめます、やわらかに
聞くに堪えなかった波音のこと
きれいに捨てて欲しかった手紙のこと
笑うよりほかになかった星の夜のこと
甘すぎて厭わしかった果実のこと
風に揺れる葉は言葉を持っていて
わたしはそれを許すのが不得意で
身代わりに解き放ちます
髪や背や指を
思い出はいつか
上手に整列をしてくれるのでしょうか
いまはまだ
号令の言葉も見つからないけれど