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[170251] 静かなまぼろし

詩人:千波 一也



ありの行列は

時間の砂をせっせと運んでゆくような

そんな気がして、わたし

のどが渇きました


真っ白、とは言い難いミルクを

すっと飲み干せば

胸の時計は

狂いはじめます、やわらかに




 聞くに堪えなかった波音のこと

 きれいに捨てて欲しかった手紙のこと

 笑うよりほかになかった星の夜のこと

 甘すぎて厭わしかった果実のこと




風に揺れる葉は言葉を持っていて

わたしはそれを許すのが不得意で

身代わりに解き放ちます

髪や背や指を


思い出はいつか

上手に整列をしてくれるのでしょうか

いまはまだ

号令の言葉も見つからないけれど


2011/08/04 (Thu)
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