詩人:剛田奇作
タロットを導く細い指先 は、宿命の民の横顔
濁る不治の泉にも
やわらかな光を
その代償は狂気の魂
月夜に舞い踊る、虚言を
髑髏の指輪にオパール
原石は、千年の魔よけ
錆びた十字架を握る
触れられぬ仮面は
永遠の自由の証
彼らは、ジプシー
獣のごとく俊敏で
猫のごとくしなやかな身体
揺らめく蝋燭に漂う
奇跡の終焉り
秘術が宿り、
語りはじめる
漆黒の瞳の向こう側
定められた命の甘美な味
腐ったウィスキーを嗜み
森羅万象の影の中
鶏の内臓を投げ込んで
蛇の革をなめし続ける
絶えたはずの
流浪の民
彼らは、ジプシー
官能的な腐敗に
清らかな杯を授けて
滴らすのは
棺桶から溢れ出す聖水
彼らは、ジプシー
覚めやらぬ
明け方の闇へ