詩人:千波 一也
花弁のような裸体になって
柔らかくも冷ややかな
草むらに横たわると
この黒髪は
匂いに濡れる
花咲く野辺には
見つかりがたい陰があって
花弁はいつか
そこへと落ちつく
(仲間だろうか
(我が身も仲間と思われて
(涙からがら触れたのだろうか
奇麗な肢体が欲しいというのに
言葉は甚だ無力であるから
絵画や彫塑の傍らで
ときどき笑みなど
浮かべてみせる
不快な湿度は
そうして覚えた
(重たいものをはね除けながら
(いつかは己も除けられて
(望むともなく縛られてゆく
(望むともなく重たくなって
花々の奥底に潜むものをうたうとき
命はその身をいだかれている
影の見つかりがたい確かなそれが
柱であることなど
薄皮たちには
わからない
身軽なものを見上げるまでは
わからない