詩人:千波 一也
風のなかには
なんにもないのです
だから
吹き抜けていく言葉にも
なんら意味などないのです
おわかりならば
すべてやさしく奏でましょう
嘘も願いも涙のわけも
せめてやさしく奏でましょう
風を
まもれるものがあるとするなら
風のほかにはあり得ません
それがおそらく
風へのあこがれの源です
そうして風は
まもられるのです
風のなかには
なんにもないのです
だから
みんな言葉になるのです
孤独や希求や焦燥に
つかのま触れた
気になるのです
いけないことなど
どこにもひとつもありません
許されることや
迎えられることだって
ありません
信じるもなにも
季節はとうに風なのですから
一度
帰ってみては
いかがでしょうか