詩人:中村真生子
都心に住んでいた時
所用で地方へ出かけた。
北陸か上越だったと思う。
ちょうど今時分だったのだろう。
田園地帯に入ると
車窓にれんげ畑が広がった。
一面のピンクの花畑。
子どもの頃
よくこの中に入って遊んだ。
お目当ては白いれんげ。
畑の中を蜂のように飛び回りながら
友達と競って探した。
大切な宝物を探すように…。
都心は緑が多く
花も結構咲いている。
ホトケノザやナズナなどの野草も
街路樹の根元や公園で春を告げてくれる。
けれど車窓のれんげを見て思い出した。
この花をまだ見ていなかったと…。