詩人:どるとる
涙の数だけ 悲しみが
笑顔の数だけ 喜びが
あふれている
あふれている
この世界には
たまには嬉しいのに涙流すけど
雨が降るから傘を差す
そんな当たり前なことが
失われつつある世の中で
どこまで平常心を保てるのかな
今日も雨は止まない
ぼくの心に降るから
静かに目を閉じたまま
動かないぼくは石像みたいに 座布団の上で本を読む
ちいさな出来事の数々をいちいち思い出だって呼ぶのもまたいいものさ
たとえば今日君が笑ってくれたところとか 今日けがひとつしなかったこととか
幸せだって思えば
違うともいえないだろう?
ほら 雨雲が立ちこめて 予想通りのどしゃ降り
アスファルトから何もかも濡らしにかかる雨
どこかの家の窓にぶら下がった照る照る坊主
むなしく 仕事果たせずうなだれていた
そしてまた どうでもいいことでぼくは苛立って
その場しのぎの言い訳で開かないはずの踏切を無理やり開けようとして無駄な傷を負う
そんな毎日
雨が降るから傘を差す
そんな常識的なことさえたまには ひねくれて 犯したくもなるのさ
雨はまだ降り続いてる
それなのにぼくは傘をたたんで 服濡れるのも気にしないで
スキップしながら
悲しみの中
雨の日の代名詞ともいわれる 車が 水たまりを はじいて
歩道を歩く人にかかる
そんな バッドな出来事に遭って それでも笑っていた
いつまでも いつまでも
それこそ日が暮れるまで ひとり佇んでた
大切なものは 昔も今も変わらない
傷つくことをおそれないでそれを楽しむことなのさ
雨も見方を変えれば
雨ごいのお導きです
畑に 恵みの雨が降り注ぐよ
ぼくにはまあただ冷たくて邪魔なだけだけど
ああ今日も
涙の数だけ 悲しみが
笑顔の数だけ 喜びが
あふれている
あふれている
この世界には
たまには嬉しいのに涙流すけど
さあ 幕が上がればそこに…