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[153469] ただ流れる涙を両手で掬う

詩人:どるとる


落ちる涙には意味がある
流れてそのまま地面に落ちてはじけても
ただ流したという記憶だけがなぜか残ってて
流した理由なんてすぐ忘れるんだろう
小さなものから順に

こうして落ち続ける涙を人ははじめて流したとき どう感じたのだろう
目から 水が絶え間なくあふれる
今じゃ当たり前なそんなことさえなんだかおそろしいことに思えたのかな
ぼくがはじめて涙を流したとき どう感じたのか
今にして思えば昔すぎて忘れた

今日もどこかで誰にも掬ってもらえずにただ 消えてゆくだけのいくつもの涙
流れる理由が悲しみであれ喜びであれ
一粒も掬われない涙
当然救われないその人

喜びだって 一人だけで味わっても悲しいだけだ
ふいによぎる切なさは一人だからだろう
隠せない 誤魔化せない

この世界にいる人の数だけ 涙はあるわけじゃないのさ
無限にあるんだよ

ずっとぼくの中で
そして君の中で
消えない 涙のあと
それを流した記憶

ただ 涙が流れる
そのさまをぼくがぼくを外側から眺めてる

今、ぼくの涙はどうでもいいから
君の涙を掬えるのなら 君を救えるなら
ぼくは君の瞳から零れ落ちる涙を地面に落ちる寸前に受け止めたい
そしてその涙が悲しい涙ならばその悲しみを少しでもわかってあげたい
そしてその涙が喜びの涙ならばその喜びを一緒に分かち合いたい

今日も意味もなく流れてははじけるだけの涙に意味を 与えよう

ぼくは、ただ流れる君の涙を両手で掬う
ぼくが掬わなかったら君の涙はただの涙で終わってたんだ
掬い上げたからこそきっとそれなりの意味を持った

ほら 一人で涙を抱えるよりずっと
二人ならば同じ悲しみでも 喜びでも
何倍も何十倍も心強いでしょ?

鏡にうつったぼくの涙も掬われ救われたよ
そして君が傍にいてくれるだけでぼくにはこの上ない救いなのさ。

2010/02/18 (Thu)
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