詩人:min
ひやりとした秒針を八十の眼が追っているのかと思うと
白く薄い笑顔のひとつも
浮かべたい
生まれる前からこの椅子で頬杖をついている、
そんな目眩を
終業のチャイムが
のびやかに分断してゆく
きいろい おしゃべりな すかーとが
ぱたぱた ちいさい おべんとうばこ かかえて
ちらばったり あつまったり
切りすぎた前髪が
さっきからちらちらと
目の端に映り込んであたしはもう
消えてなくなりたいような
気さえする
実際、拭き跡ばかりが目につく窓ガラスの
向こうは、
たいてい馬鹿みたいに
青い空が広がっていたから、そこに
飛び込みさえすれば消えて
なくなるのは、
案外
かんたんだったのかもしれない
あいにくと今日は薄曇りで、
友人たちを感傷的に
させるのも
気が進まなかったので、あたしはおとなしく
紙パックから伸びたストローを
噛むことに
意識を集中させる
スカートの上が
秒針の刻んだあたしで少し汚れた