詩人:たかし ふゆ
テールランプが泳いでいるのを、ベランダから、ただ遠目に見ている
今朝がたから降りしきる雨
シーツに染み付いた匂いの主の肌の温度と
冷め行く僕の体温とをグラフにして遊んでみる
ただ、さめざめと雨の音だけがする
安直な夜を安直に過ごした
先週の朝も、確かこんな雨の朝で
その時、僕らは二人でくるまっていて
抱き合ったまま
それぞれ想いに更けていた
何故抱き合うと気持ちが良いのか、
という、つまらない疑問はあっさりと解けた
気持ち良いのは外側でなく
内側から来る体温の温もりなのだ
どうしてこうなったのかを
煙草をくゆらせながら、考える
僕らは、ただ二人でいようとして
それ故に関係がおかしくなって
納得のいかぬまま
僕は激しさを堪えきれず
彼女は想いを伝えきれず
最後に、傘をさしてつつかれた背中の
指の感触だけが残っているのに
もう、彼女の声も顔も、雨のまばらに消えかかっている
雨は洗い流すのではなく
きっと、ボヤかすだけで
ちん、と電話が鳴る
雨と電話の音が鳴り響く中で
僕は受話器に手も触れず
ただ、煙草をくゆらせている
意固地になって、くゆらせている