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詩人:くじら
木漏れ日を緩やかに揺らす
温かい風に紛れた季節は
遠い過去から近い未来へと
静かに吹き抜けてゆく
貴女が居なくなったあの日から
いくつもの白い季節が巡り
冷たい記憶と風は
温めようとする心と景色に
容赦なく吹きつける
あなたは今幸せでしょうか?
北風は水溜りをガラス色に変え
しかめ面だったあなたの表情を
より一層固くしながら
向かい風にも負けず
良き母として
愛を守っているのだと
想像しています
負けず嫌いな頑丈な性格は
相変わらずでしょうか
風の妖精が届けてくれた
あなたの“うわさ”に
あの時の「答え」が
見つかるんじゃないかって
そんな気がして期待したけれど
時の流れと共に色褪せた
答えなんてもう必要なくて
どうせなら色なんてなくなって
透明のガラス玉みたいに
無機質になってくれれば
ポケットの中で
忘れてしまえるのに
あなたはあなたの
答えを見つけましたか?
正しい道順を辿ってきた
その答えは風に吹かれて
たった一つの家族の
勇者にもなれず
剣を捨ててしまった僕は
闘い方も忘れてしまう程
長い歳月が流れてしまい
想いは今も公園の片隅で
渦を巻くつむじ風
出逢った頃は互いの
「同じところ」探してきたのに
気づけば互いの「違うところ」
探すようになっていて
その時に終わってたのかな
僕らは
鳥になって風にのって
今いる「ここ」から
空の向こうの「どこか」へ
原因は「ここ」にはないのに
「僕ら」にあったのに
それでも気休めになるなら
空の中で風に吹かれたい
明日の風もさらに勢いを増し
僕らの頭上を
吹き抜けてゆくだろう
配達されなかった
『答え』を抱えたまま