詩人:良い席
ザアザアザアザアザアザアと雨が降っている
薄暗い世界の電灯にザアザアザアザアと雨が飛沫を上げている
あんなに良い物は無い
どれ程素晴らしい雨だろうか
夜を劈くけたたましい豪雨に胸が躍る
シトシトと冷たく濡れる
べちょべちょの洋服が肌と密着する、ああ雨が上から降ってくる
とめどなく振って来る、どうしたらいいんだ。もう堪らない、こんなに振ってきちゃあ俺もお手上げだ。
傘なんか向こうの方にぶん投げてしまおうとそう思う。
えいやあっと勢いよく投げた傘は予想外にすてんと目の前に転がった。でも雨の降る降るシャアシャアと降る雨に打たれ星も無い真っ黒けな空を仰いで透明の雨が雨が、俺の世界の中に連綿に瀰漫する。
ああ俺の今見た雨はもう地面と激突して死んでしまったぞ。さあ今度もまた雨が来た。ああまた一瞬で地面を濡らしてしまった。
やけに美しい雨だ。日が明けてしまえば、この面妖な雨も失われてしまう気がしてならない。口を開けば避けることなく入ってくる。サンダルがもうびしょ濡れだ。ああ何もかももうびしょ濡れだ。あの家さえももうびしょ濡れだ。なんたるありさまだろうか。また今度、会おう雨よ。