詩人:どるとる
自分にしかわからない切なさにしてやられながら
ちょっと先のほうで足音立てながら近づいてくる春を感じる
はじまりの季節なのに
何ひとつはじまるって気しないのは
偶然なんかじゃない
だってぼくの中には何も残ってない
希望も可能性も
さよなら
夜に手を振り
星に別れを告げたら
電気を消して
夢のドアを開けて
ぼくは朝の来ない
街へ行く
なんて 強がりをひとつまみ 振りまいて
ふいに
悲しくなるのは
はじまりの季節なのに
何ひとつはじまる気配がないから
おわってはじまりおわってまたはじまる
ずっとそれを繰り返す日々がいつしかつまらなくなったんだよ
時計の針をおもむろに巻き戻してみても
意味はない
仕方ない
それでもなんだか
抵抗してみたかった
だから 目をつぶっていた
目を開いてみえる景色の中で何が起きてても知らんぷりした
鳥が飛ぶ
屋根の上から
行く先を 見つけたのかな
1人になってしまった…
燃えるような夕暮れも過ぎ
もう夜の真ん中
はじまりははじまってる
ぼくが生まれた日から
月に照らされ
風に吹かれて
朝になるまで
ただくだらない夢を見ても つまらない
それでも気づけば
鳥かごの中で
餌を欲しがり
身を粉にして
働く ぼくがいる
春を前に
立ち止まる この両足
はじまりの季節なのに
何ひとつはじまるって気しないのは
偶然なんかじゃない
だってぼくの中には役に立つものは何もなく ただどこまでも涙の海が広がってるだけ
はじまりははじまる
半ば強制的に
厳かなまでの時の流れが夜を朝に変える
世界の鳴き声がほら夜明けを告げる
はじまりの季節がいつのまにやらぼくの目の前に咲いていた
薄紅色した 花びら舞い散らせて
芳しき 香り 放って。