詩人:千波 一也
打ち上げられた
鯨みたいに
疑問符は
すべもなく
空の青さを映しだしている
怒号も慟哭も、祝福も
みな同じ音ならば
この
広い世界に満ちるものは
みな同じ水だと
断言してしまおう
金色に
いろづいた葉を灯すのは
やはり、金色の
日没
寂寥とは
あまりに完全な
美しさなのかも知れない
昔話が守るのは
うまれたばかりの
言葉たち
間を
取りすぎた樹木には
寄り添うことだけ
哀しく
叶う
満開めいた
まがいの桜が
口をそろえて
つぼみをうたう頃
鏡は
見知らぬ鏡に
その身を映しだされるだろう
波音の立たない
無限にしろい
海原に
何千年、何万年の
形をもたぬ
形が憩う