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詩人:千波 一也
やさしいひとの
翳りを見つけた日は
こころに羽が
生えるのです
軽くなって
軽くなって
どこへも辿り着けない
わたしになるのです
落下は
とても重たい手段だと
そうしてはじめて
知るのです
正しい羽の危うさは
わたしの自由を許すこと
そして同時に
脅かすこと
見上げた先には雨雲がいて
欠いてはならない滴を
抱きしめます
わたしの捨てた暗がりも
もしかしたら其処で
恵まれているかも
知れません
かつてわたしは
光でありました
いいえ
光を恋うことを
自らの光としておりました
それとなく
悲しいひとを待ち伏せて
傷つくひとを待ち伏せて
憐れなひとを待ち伏せて
光を
恋うことの
矛盾のかげに
小さな安堵を忍ばせながら
わたしは曲がらぬ
軌跡でありました
すがしいひとの
迷いに触れた日は
背中をこころが
つたいます
冷たくなって
冷たくなって
命の浅瀬に
怯えます
それゆえ
海は果てしなく
空も変わらず果てしなく
わたしは
上手になるしかなくて
月日をかぞえて
笑うのです
切り捨て難い暗がりへ
幾度と知れず
繋がるのです