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詩人:どるとる
有頂天になった僕は無敵だ
誰もかなわないんだ
誰にも優しさもらえなくても
僕は自分を愛すことの喜びに慣れすぎてしまったから
他人の優しさなど
いらないんだ
必殺技も決めゼリフもなにもないヒーローはしばらく黙ったまま
思い出したように
『あ、どうも』なんて情けなくこぼした
どうしていつも強がってしまうんだろう
悲しくないはずなんてないのにね
どうしていつもひとりになりたがるんだろう
ひとりのさみしさや切なさを知った僕なのに
それさえごまかそうとする僕がいるよ
ここにいる僕の影を照らす光
なんだかおかしなものだな
影に光が寄り添うように ほら
影は光に守られて
確かにここにある
そんな 影のような
僕は何に守られて
ここにいるんだろう
誰か そのこたえをおしえて
皮肉らずに感謝したいから
無敵なのは他人が寄り付かないからだろう
そうヒーローは孤独に ただひとり誰もいない 舞台上で
自分にしかウケない
笑いを ばらまく
とても暗い光景
だけれどとても悲しい光景だ
それでも笑うのは ただ
悲しさを隠すためだから
けっして おかしいからじゃない
降り止まぬ雨は生まれた日も僕の中に降っていた気がする
それは悲しみという生きる者にのみに死ぬまで与えられた生きる者の証
流れ続ける涙はその形
目を閉じ 耳をすまし
僕は聴こえない声に耳を傾け
見えないものに目を凝らすんだ
悲しみは誰にも悲しいものならば
僕の悲しみなんてただ世間一般では道端に落ちてる小石とでもいうのかな
いいや、そんなはずはない
僕は僕で僕なりに
かぎりなく悲しいはずなんだ
鏡を通して見える自分は嘘じゃない
ここにいる自分は嘘じゃない
心臓はリズムを刻み
規則的に動く
そして僕の足下には影がいつも揺れる
生きてる証はごまんとある
それだけで僕はこの世界に人という形として存在する。