詩人:遥 カズナ
こんな しどけない拙さは
ずぶ濡れのまま
折りたたまれて しまわれた傘のようだから
なにかにつけて
軒先の雨宿りみたいな
そこはかとない歌が恋しいのだろう
遠い雷鳴を憂う
こんな自己憐憫の反芻を踏み蹴散らし
湿った子猫が駆けてゆく
振り払らったはずの
幾つかの情景を映す雫は
時の裾を滴り
淀んだ胸を穿つ
思わず空を見上げれば
眩しいだけの雲のかげりが暗い軒の影をかすめ
蒼白の羽が瞼を撫でた
もう既に
この掴み手の湿った感触が血肉そのものに近づいているのなら
寧ろ しっかりと握りしめ深く噛みしめつつ開き
固く強く踏みゆこう
ずぶ濡れの恥ずかしさのそのままに