詩人:高級スプーン似
井の中で出会った
王様ガエル
噂で聞くよりもずっと
偉そうな奴だった
けれども
自信を失くして
来た道を
戻り続けていた
僕よりも
下を向いて
歩いていたのに
井の中に落ちた
僕なんかよりもずっと
立派な奴だった
背中に乗れよと
空をにらむ
王様ガエルは
やっぱり
偉そうだったけど
海を知らずに
孤独を知った
王様ガエルは
僕なんかよりもずっと
ずっと立派な奴だった
けれども
空は飛べなくて
壁にぶつかって
二人とも傷だらけ
なぜだか僕は
笑った
アイツもなぜか
笑ってた
どれだけ
空を仰いでも
ここからじゃ
海は見えないけれど
振り返ると
大きな背中が
よく見えた
あの頃の思い出は
僕の左胸で
いまもピョンピョン
跳ねているから
まだやれる
もう少しいける
傷だらけになって
今日一日を乗りきって
帰り道を
偉そうに歩くんだ